- 「旧・退職給付会計基準」の必要性
- 「退職給付会計基準」の必要性
「旧・退職給付会計基準」の必要性
企業年金制度が導入されて以降、企業が直接給付を行う退職給付の一部を企業年金制度による給付に移行して両者を併用することが増えました。しかし従来は、企業年金制度に基づく退職給付の会計処理については明確な基準が示されていなかったことから、直接給付する部分については退職給付引当金による処理が行われる一方で、企業年金制度については拠出金を支払時の費用として処理する実務が行われていました。
ところが、退職給付の支給方法(一時金支給・年金支給)や退職給付の積立方法(内部引当・外部拠出)が異なっているとしても、いずれも退職給付であることに違いはないため、財務諸表の比較可能性を担保する観点から、退職給付については、支給方法や積立方法に関わらず同一の会計処理が行われるべきであると考えられていました。
また、バブル経済崩壊後、特に確定給付型の企業年金制度では、年金資金の運用利回りの低下等により、企業の年金給付コストが増加し、企業の財政状況が悪化するおそれがありました。そのため、企業年金に係る情報は、投資情報としても企業経営の観点からも重要性が高まっていました。
このような経緯もあり、平成10年6月に「旧・退職給付会計基準」が公表され、退職給付については、その全般に係る当期の負担を費用計上するとともに引当金を計上する、という会計処理を行うこととされました。
「退職給付会計基準」の必要性
平成19年8月の「東京合意」(会計基準のコンバージェンスの加速化に向けた取り組みへの合意)を受け、まずは以下の三点について退職給付に関する会計基準の見直しが検討されました。
- 未認識数理計算上の差異及び未認識過去勤務費用の処理方法の見直し
- 退職給付債務及び勤務費用の計算方法の見直し
- 開示の拡充
そして、①貸借対照表が積み立て状況を示すことになることや注記事項を拡充することなどにより、財務諸表利用者の理解可能性を高め、透明性の向上による財務報告の改善を早期に図ることになる観点や、②貸借対照表上の取り扱いは国際的な退職給付会計の見直しと整合的であり、退職給付債務及び勤務費用の計算方法の見直しと併せてコンバージェンスを図る観点から、平成24年5月に「退職給付会計基準」が公表されました。
以上、現在の「退職給付会計基準」に至る経緯でした。